講演「気候危機、食を通じて私たちができること」農林水産省あふの環プロジェクト、サステナウィーク参画イベントが開かれました。

講演「気候危機、食を通じて私たちができること」農林水産省あふの環プロジェクト、サステナウィーク参画イベントが開かれました。

2020年9月17日、農林水産省あふの環プロジェクト、サステナウィーク参画イベントとして、気候変動とプラントベースについてオンライン講演「気候危機、食を通じて私たちができること」を行い、その後パネルディスカッションを行いました。

サステナウィークは農林水産省「あふの環(わ)2030プロジェクト~食と農林水産業のサステナビリティを考える~」(農林水産省、消費者庁、環境省連携)キャンペーンで、本イベント主催の株式会社MOTHEREARTHは同プロジェクトに参画し、Vege for peace(ベジフォーピース)が共催しています。

温暖化を始め地球環境が変化する中、サステナブル・SDGsの取り組みに大きく関係するのが日々の食事です。

体・心、未来の子供達にもやさしい食事の選択肢の一つであるヴィーガンと深刻な気候危機との関係を、上智大学大学院地球環境学研究科井上准教授が解説し、

後半では、ヴィーガン普及プロジェクトVege for peaceや環境保護団体で活動する学生らも登壇し、共に食の未来を考えました。

(出演者プロフィールは記事最後にあります)

Youtubeで講演内容を視聴できます!


急な告知であったのにも関わらず、イベントはすぐに満席になり、急遽Facebookライブでも視聴可能にしましたが、オンタイムで350名以上の方に視聴していただき、大好評となりホッとしております。

前半では、体、心、未来の子供たちにも優しい食事の選択の一つであるヴィーガン、ベジタリアンと深刻な気候危機との関係を、上智大学大学院地球環境学研究科井上直己(井上なおみ)准教授に、下記3つの点から解説していただきました。

 

1:気候危機はどれだけ深刻なのか

 

産業革命時期と比べ、2017年時点で世界の平均気温は1℃上昇しています。

気温上昇に人間の活動が影響している可能性は95%であり、確実です。

 

今後地球の気温は10年で1.5℃、20年で2℃上昇し、2100年には4.8℃上昇するであろうと予測されています。

 

気温上昇による将来のリスク

・海面上昇、高潮

・洪水、豪雨

・インフラ機能停止

・熱中症

・食糧不足

・水不足

・海洋生態系損失

・陸上生態系損失

 

気候変動が進んでいる原因は人間が出すCO2だけではありません。

人間がだすCO2の増加が気温を上昇させ、それによる地球の壊滅的変化がさらに気温上昇を招き、連鎖反応を起こして急激に気温が上昇すると予測されています。

 

壊滅的変化が壊滅的変化を呼び雪だるま式の「連鎖反応」で加速的に地球環境が変化していることを様々な例を用いて説明していただきました。

 

2、肉の消費が気候危機にどのようにつながるのか

 

パーム油や農薬をたくさん使った作物も気候変動に影響があります。

しかし肉の消費の影響が最も大きいことがわかっています。

牛は工業的にたくさん増やされています。そしてその牛を育てるためにも自然が破壊されているのです。

例えばアマゾンの熱帯雨林の火災。

これは放牧地や飼料穀物の拡大等を目的とした人為的火災です。

牛は本来草を食べる生き物です。しかし工業畜産においては大量生産、経済性、商品価値のため、大量に穀物飼料が与えられています。

大量の飼料を育てるために使用する農薬や化学肥料は生物多様性の損失の原因になっています。

家畜の糞尿による汚染も深刻であり、水質汚染の原因です。

家畜を育てるために大量の穀物が牛に投入されていますが、穀物を家畜ではなく人が食することでより多くの人々を養うことができます。

 

しかし、私たちの食生活はますます肉食指向になっており、その結果、水、土地、栄養素、生物多様性、気候に与える圧力が着実に高まっているのが現状です。

 

これからの10年が地球と人類の未来を決めると多くの科学者が言っています。

 

では、私たちは何ができるのでしょうか。それは肉食を減らすことです。

 

3、肉食を減らすことは我慢なのか

 

気候変動対策に食事は重要な鍵となります。カルフォルニアの研究機関が100個の気候変動対策メニューを削減量に応じてランキング化したものがあります。

なんとトップ20のうち8個が食事に関するものだそうです。

 

内閣府、東京都庁、帯広市役所などはポールマッカートニーが提唱している「ミートフリーマンデー」を実施しています。それは週に1度月曜日だけでも肉を食べない食事をしようという取組みです。

ヴィーガンに取り組む企業も増えていますが、日本ではまだまだ少数派です。

日本では肉を食べないことが健康に悪いという考え方が根強いのも一つの原因です。

しかし、がん、心臓病、糖尿病、肥満などは高カロリー、高脂質の肉中心の食習慣に影響されることが疫学的に証明されています。これらの病気を予防、回復させた食習慣は植物性の食品が中心です。米国のレポートでも日本の江戸、元禄時代の食事が理想と書かれています。

ヴィーガンの人はタンパク質不足が心配されますが、植物からも十分に摂取できるということを世界のアスリートが証明しています。

 

実際に2019年3月からベジタリアンの食生活を中心とした井上准教授の発見や変化は、体が軽くなった、中性脂肪は40%減、体脂肪率は3%減、血圧が10低下、胃腸が軽くなった、快腸、快便で心身共に健康になったそうです。

かつては肉が大好きだったが実践するうちに好みが変化し、美味しい野菜や伝統的な和食などとの様々な出会いがあり料理を楽しんでいるそうです。

 

これからの日本人はどうあるべきか。

それはどのような場所でどのように生かされてきた命が、どのように処理され、どのような環境影響があるのかを知り、消費者としての責任ある消費が必要です。

自分の身体が本当は何を欲しているのか、静かに耳を傾けること、体の声にこたえることが「責任ある消費者」になる入り口なのではないかと考えます。

最後に井上准教授(写真)からのメッセージです。

 

「まずは週1回、食事から肉を抜いてみて体の声を聴いてみませんか。きっと色々な発見があって楽しめると思います。」

 

後半は株式会社MATHER EARTH廣岡輝(ひろおかてる)さん(写真)をモデレーターにお迎えして、

環境保護団体で活躍するFriday for futureの酒井功雄(さかいいさお)さんと藤原衣織(ふじわらいおり)さんと共にパネルディスカッションを行いました。

ヴィーガンの取り組み方や考え方などをシェアしたり、参加者の方からの質問や悩みにお答えしました。

 

酒井さんは友人からヴィーガンについて質問されることもあるそうで、環境問題からヴィーガンに興味を持つ若い方が増えているそうです。

その一方で周りに理解されないといった参加者の方からの声もありました。

ヴィーガンをやってみたい学生さんに向けて、Friday for futureのお二人からのアドバイスもお聞きしました。

何もやらないよりは小さいことでも今すぐやってみる、そうすれば数十年後の未来の環境にいい影響があるはず(藤原さん・写真)

負担にならないように初めから完璧を目指さず仲間と楽しく取り組む(酒井さん・写真)

 

前半の井上准教授の講演と後半のディスカッションとで一致した意見は、環境問題を改善するには一人ひとりの小さなアクションが必要であり、ヴィーガンと上手に付き合い自分自身がヴィーガンを楽しむということです。

 

今回の講演はzoom、Facebookライブでたくさんの方にご視聴いただきました。

ご参加いただきました皆様ありがとうございました。



ライターから一言

今回の井上准教授のお話を伺って、

思っていた以上に気候変動が進んでいることに気づきました。

ヴィーガン商品に関わらず自分が消費するものがどのような過程で商品になっているのか。地球にどのような影響を及ぼすのか。できる限りわかった上で選択していきたいと改めて思いました。

ディスカッションでの「自分の身体のために選んでいた食事が地球にも優しくて嬉しかったと」という岩田絵弥曄(いわたえみか)さんの言葉が印象的でした。

難しいことを考えず、先ずは自分を大切にする。自分が健康になる。

それが結果的には地球をよくすることに繋がるのではないかと思います。

 

〜この記事のライター

渡邉小百合(わたなべさゆり)

自身が身体を壊したことをきっかけに、通院生活を送りながら様々な食事方法を学ぶ。

その中でRawフードと出会い、現在はRawスイーツ教室やイベンドを主宰、企業向けにレシピ開発を行う。

また豆腐の普及活動に携わり、日本の伝統食である豆腐の素晴らしさを伝えている。

 

〜イベント出演者

登壇者紹介

 

講師

井上 直己(いのうえなおみ) 上智大学 大学院地球環境学研究科 准教授

 

2001年東京大学法学部卒業。以来、環境政策の企画立案に携わり、2018年より現職。英国ケンブリッジ大学で修士号(環境政策)、英国サセックス大学で修士号(環境開発)を取得。神奈川県大和市環境審議会委員として地元市の環境行政、徳島県の検討会委員として、消費者行政にも参画。消費がもたらす環境影響と気候危機について、市民講座や学校への出前講座を積極的に実施。

 

モデレーター

 

株式会社MOTHER EARTH 代表取締役

廣岡輝(ひろおかてる)

 

京友禅の職人の家に生まれる。地元の大学卒業後、京都の上場アパレル勤務後、国産メディカルメイク、米オーガニックコスメ、国産オーガニックフード等のビジネスデベロップメントに従事。現在、複数のエシカル、サスティナブル、オーガニック、ヴィーガンをテーマとしたビューティ&フード領域のブランドビジネスのビジネスデベロップメントを支援中。

 

2019年5月、SDGsをイノベーションで課題解決をしたい仲間と一般社団法人MEGVを立ち上げる。アースデイ東京理事、EARTHDAYチャンネルの統括プロデューサー、ワールドシフトフォーラム実行委員会責任者等に従事。

 

パネルディスカッション登壇者

 

Vege for peace主宰

岩田絵弥曄(いわたえみか)

 

内閣官房オリパラ基本方針推進調査 ホストタウンアドバイザー

経済産業省創設 おもてなし規格認証 現地調査員(認証機関 一般社団法人OSTi)

 

みんなが食べられるヘルシーな食・ヴィーガン のフードアナリストとして活躍。地域のベジの名店からミシュラン掲載店まで幅広く案内することで定評がある。全国初のヴィーガン関連コロナ支援プロジェクト「Vege for peace(ベジフォーピース)」を立ち上げ、飲食店・生産者支援を行う。

https://mirai-sanpo.com/

メディア出演・テレビ東京、日本テレビ、千葉テレビ、日本経済新聞、NHK WORLDなど。

 

Fridays For Future

酒井功雄(さかいいさお)

Fridays For Future Japan オーガナイザー

 

アーラム大学1年。2001年、東京都中野区生まれ。17年に1年間米国ミシガン州に高校留学。現地で気候変動の緊急性に気付き18年12月から国際環境NGO350.orgのボランティアになり、そのつながりで日本における学生たちの気候ストライキ、”Fridays For Future Tokyo”(以下FFFT)の開始に関わる。その後オーガナイザーとしてFFFTでグローバル気候マーチの運営や運動の全国組織化に関わり、直近ではエネルギー政策に関しての国政キャンペーンの企画などに携わる。現在は米国のリベラルアーツ大学において、環境文学などを学んでいる。

 

Fridays For Future

藤原衣織(ふじわらいおり)

 

1997年生まれ。美術教師である両親のもとで、アートに囲まれながらもレールに沿った人生を送る学生時代。食の問題への関心が環境問題へと広がり、大学4年時から続ける気候正義を求める若者のムーブメント「Fridays For Future」で現在も活動中。

 

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